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楽曲解説


カンタータ211番 BWV211

Kaffee-Kantate(コーヒー・カンタータ)

Schweigt stille, plaudert nicht
そっと黙って、おしゃべりめさるな

初演 1734年頃
編成 独唱 ソプラノ(リースヒェン)、バス(シュレンドリアン)、テノール(語り手)
フルート、ヴァイオリン1・2、ヴィオラ、通奏低音
用途  

バッハの時代のライプツィヒにはコーヒーハウス8軒があり、大繁盛していたが、このコーヒーハウスの中には音楽も提供する店が出てきて、バッハ自身もコレギウム・ムジクム(大学生主体の演奏団体)とともに出演していたといわれている。さしずめ現在のライブハウスといったところか。このコーヒーカンタータもおそらくはこのコーヒー店で演奏されたものと考えられている。
話の筋は、流行のコーヒーのことばかり考えている若い娘のリースヒェンに、頑固おやじのシュレンドリアンが、何とかコーヒーをやめさせようとするやりとりから成り立っている。作詞は農民カンタータと同じくピカンダーであるが、もともとの歌詞は第8曲までしかなく、最後の2曲は追加された。聞いてみるとこの追加された第9曲に話しの"落ち"があるのだが、この部分を追加したのがピカンダー自身かバッハの手になるものなのかは不明である。

第1曲 レチタティーヴォ(語り手)

(語り手)
おしゃべりはやめて、お静かに。
今から始まることの次第をお聞きください。
そうら その名もいかめしいシュレンドリアンが
娘のリースヒェンを連れてやってきました。
どんな仕打ちを娘から受けたのか、
よく聞いてみましょう。

第2曲 アリア

バス、弦楽合奏、通奏低音

(シュレンドリアン)
子供というのは、
厄介千万、苦労の種でしかない。
娘のリースヒェンときたら、
毎日毎日、何度も何度も、言ってきかせても、
すぐもう一方の耳から出ていってしまう。

第3曲 レチタティーヴォ

ソプラノ、バス、通奏低音

(シュレンドリアン)
この厄介者、はねっかえり娘め!
いつになったらわかってくれるものやら。
コーヒーなんかやめなさい!
(リースヒェン)
まあお父さん、そう厳しいこと言わないで。
もし、一日三回のコーヒーが飲めないなら、
とっても残念なことだけど、
しなびた山羊の肉みたいになっちゃうわ。

第4曲 アリア

ソプラノ、フルート、通奏低音

(リースヒェン)
ああ、コーヒーの味の何と甘いこと!
千のキスよりまだ甘い、
マスカットよりもっと柔らか。
コーヒー、コーヒー、コーヒーなしじゃやってけない。
私を何とかしようと思ったら、
コーヒーをくれるだけでOKよ。

第5曲 レチタティーヴォ

ソプラノ、バス、通奏低音

(シュレンドリアン)
もしおまえがコーヒーをあきらめないなら、
結婚パーティーには行かせないぞ。
散歩に行くことすら許さない。
(リースヒェン)
ぜんぜんかまわないわ、コーヒーさえくれたらね。
(シュレンドリアン)
わかったぞ。
はやりのスカートも買ってやらない。
(リースヒェン)
そんなのなくても、死にゃしない。
(シュレンドリアン)
窓の中から、町を眺めることも
できなくしてやる!
(リースヒェン)
平気平気、おんなじことよ。
私はただコーヒーを飲ませてって言ってるだけよ。
(シュレンドリアン)
帽子につける金銀細工も、
手に入らないぞ。
(リースヒェン)
かまわない、でも、私の楽しみだけは取り上げないでね。
(シュレンドリアン)
この無礼者め、
コーヒー以外、何にも要らないというわけか?

第6曲 アリア

バス、通奏低音

(シュレンドリアン)
わがまま、強情な娘は、
まったくどうにも手におえない。
でも、「泣き所」さえうまく見つけたら、
しめしめ、何とかできるだろう。

第7曲 レチタティーヴォ

ソプラノ、バス、通奏低音

(シュレンドリアン)
さあ、お父さんの言うことを聞きなさい!
(リースヒェン)
コーヒーのこと以外なら、何でもね。
(シュレンドリアン)
勝手にしなさい。
ところで、結婚する気はないんだろうな。
(リースヒェン)
父さん、もちろん夫が欲しいわ。
(シュレンドリアン)
誓って、結婚なんかは許さないね。
(リースヒェン)
コーヒーをやめないなら?
ああお父さん、わかりました、それならもう、
コーヒーなんか飲みません。
(シュレンドリアン)
やったぞ、とうとう言うことを聞かせた!

第8曲 アリア

ソプラノ、弦楽合奏、通奏低音

(リースヒェン)
きょうのうちにも!
お父さんが許してくれた。
ああ、旦那さま!
ほんとにいい気分、
早く会いたい、
コーヒーのやめた代わりに、
今日ベットに行く前にでも
がっしりした素敵な旦那さまかみつかりますように。

第9曲 レチタティーヴォ(語り手)

テノール、通奏低音

(語り手)
こうして、シュレンドリアンさんは、
急いで娘のリースヒェンのために、
婿を探しに出かけました。
でも、リースヒェンは、
婿殿をうちに入れる前に、
こんな約束をさせようと思っていました、
いつでも欲しいときに、
コーヒーを飲ませてくれるように。

第10曲 合唱

ソプラノ、テノール、バス、フルート、弦楽合奏、通奏低音

(ソプラノ、テノール、バス)
猫はねずみとりが止められないように、
娘はコーヒーがやめられない。
母さんも、おばあちゃんも、
みんな飲んでる、
そんなコーヒーを娘がやめられるわけないでしょう!